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「数学ゴールデン」(第2巻)に登場した問題の解答 (2021-04-04)

数学ゴールデンは、主人公の高校生が数学オリンピックの日本代表になることを目指すというストーリーの漫画です。以前に第1巻に登場した問題を解きました。今回は、第2巻で登場しながら作中で解答が示唆されなかった2つの問題を解きます。

多項式\((x+1)^3(x+2)^3(x+3)^3\)
における\(x^k\)の係数を\(a_k\)とおく.
このとき\(a_2 + a_4 + a_6 + a_8\)の値を求めよ.
(57ページより)

解答: 6696。

解説: \(f(x) := (x+1)^3(x+2)^3(x+3)^3\)、\(g(x) := \sum_{k=0}^{9} a_k x^k\)とおく。\(a_k\)の定義より、\(g(x) = f(x)\)である。特に、\(a_0 = g(0) = f(0) = 2^3 \cdot 3^3\)である。さらに、\(f(-1) = 0\)、\(f(1) = 2^3 \cdot 3^3 \cdot 4^3\)であることと、\(g(1) + g(-1) = 2 (a_0 + a_2 + a_4 + a_6 + a_8)\)であることから、\[a_2 + a_4 + a_6 + a_8 = \frac{g(1) + g(-1)}{2} - a_0 = \frac{f(1) + f(-1)}{2} - a_0 = 2^2 \cdot 3^3 \cdot 4^3 - 2^3 \cdot 3^3 = 6696\]と求まる。

黒板に1以上100以下の整数が1つずつ書かれている.黒板から整数
\(a, b\)を選んで消し、新たに\(a^2 b^2 + 3\)と\(a^2 + b^2 + 2\)の最大公約数を
書くという操作を繰り返し行う.黒板に書かれている整数が1つだけに
なったとき、その整数は平方数ではないことを示せ.
(62ページより)

証明: \(f(a, b) := a^2 b^2 + 3\)、\(g(a, b) := a^2 + b^2 + 2\)とおく。そして\(h(a, b)\)を\(f(a, b)\)と\(g(a, b)\)の最大公約数とする。次の2つの補題が成り立つ。

補題1: 黒板に残っている整数のうち3の倍数は常に奇数個ある。

補題2: \(9 \not\mid h(a, b)\)。

問題の操作を繰り返し最後1つだけになった整数を\(z\)と呼ぶ。補題1から、\(z\)は3の倍数であることが分かる。さらに補題2から、\(z\)は平方数でないことが示される。あとは、各補題を証明すれば済むが、その前に次の追加の補題を示す。

補題0: \(3 \mid h(a, b)\)になるのは、\(3 \mid a\)または\(3 \mid b\)のいずれか一方が成り立つとき、かつそのときに限る。

補題0の証明: \(3 \mid h(a, b)\)と仮定する。このとき\(g(a, b) = a^2 + b^2 + 2 \equiv 0 \pmod 3\)。つまり\(a^2 + b^2 \equiv 1 \pmod 3\)であり、\(3 \mid a\)または\(3 \mid b\)のいずれか一方が成り立つ。
逆に、\(3 \mid a\)または\(3 \mid b\)のいずれか一方が成り立つと仮定する。\(f(a, b)\)と\(g(a, b)\)において\(a\)と\(b\)は対称なので、一般性を失わずに\(3 \mid a\)かつ\(3 \not\mid b\)としてよい。このとき\(a^2 \equiv 0 \pmod 3\)かつ\(b^2 \equiv 1 \pmod 3\)。したがって\(f(a, b) \equiv 0 \cdot 1 + 3 \equiv 0 \pmod 3\)かつ\(g(a, b) \equiv 0 + 1 + 2 \equiv 0 \pmod 3\)。よって\(3 \mid f(a, b)\)かつ\(3 \mid g(a, b)\)であり、\(3 \mid h(a, b)\)が成り立つ。

補題1の証明: 最初に黒板に書かれている整数のうち、3の倍数は33個ある。そして毎回の操作の前後で、黒板上の3の倍数の個数は増減しない、あるいはちょうど2個減ることが補題0から分かる。したがって黒板には常に奇数個の3の倍数がある。

補題2の証明: \(3 \mid h(a, b)\)の場合だけ考えればよい。補題0より\((a^2 b^2)/3 \equiv 0 \pmod 3\)である。このとき\(f(a, b)/3 = (a^2 b^2)/3 + 1 \equiv 1 \pmod 3\)。よって\(9 \not\mid f(a, b)\)であり、\(9 \not\mid h(a, b)\)がいえる。


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