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2回ほどこすと元に戻る線形な関数について (2022-03-19)

実数を引数にとる関数\(f\)で、2回ほどこすと引数を元に戻すようなものを考えます。つまり\(f \circ f\)が恒等関数になるものです。式にあらわすと、任意の実数\(x\)について\[(f \circ f) (x) = f(f(x)) = x\]ということです。これを満たす自明な関数として、恒等関数自身(\(f(x) = x\))と符合を反転させる関数(\(f(x) = -x\))がありますが、これら以外に線形な関数で条件を満たすものが存在するでしょうか。

ここで線形な関数とは、加法的でかつ斉次的である関数です。例えば\[f(x) = \begin{cases}\frac{1}{x} &\text{if } x \neq 0;\\0 &\text{if } x = 0\end{cases}\]は条件を満たしますが、非線形です。上に上げた2つの関数以外に線形な解がないことは次のように分かります。

斉次性から、任意の実数\(x\)について\(f(x) = f(x \cdot 1) = x \cdot f(1)\)なので、\(f(1)\)を決めると\(f\)全体が決まります。\(1 = f(f(1)) = f(1) \cdot f(1)\)なので、\(\lvert f(1) \rvert = 1\)となります。

では、実数の代わりに2次元実平面で考えるとどうでしょうか。2次元実ベクトルを入出力する線形関数\(g\)で、\(g \circ g\)が恒等関数になるものにはどんなものがあるでしょうか。

\[g((x, y)) = (\frac{x + y}{\sqrt{2}}, \frac{x - y}{\sqrt{2}})\]がそのような例の1つです。これが\(g = g^{-1}\)になることは、長さ2の複素数列のユニタリ化された離散フーリエ変換がその逆変換と等しいことに対応しています。一般に、求めるような\(g\)は対合行列と同一視できるので、いくらでも存在します。


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