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665音平均律の数理 (2021-05-05)

現代のピアノには1オクターブに鍵盤が12個(7つの白鍵と5つの黒鍵)ありますが、この12個である理由はピタゴラス音律に由来があります。その歴史と背景にある数理について、音律と音階の科学 新装版という書籍で、物理学者である著者が分かりやすく解説しています。

簡単に言うと、\(3^m/2^n\)ができるだけ1に近くなるような正整数の組\((m, n)\)を求めた結果から12が現れます。\(\varepsilon := \lvert 3^m/2^n - 1 \rvert\)とすると、\(\varepsilon\)をできるだけ小さくするということです。2と3はともに素数なので、\(\varepsilon\)が0になることはありません。\((m, n) = (12, 19)\)のとき\[\frac{3^{12}}{2^{19}} \approx 1.013643264770508\]がそれなりに1に近くなることから、12が選ばれたわけです。

さらに\(\varepsilon\)を小さくできるような\(m\)を探していくと、\(m = 41\)や\(m = 53\)や\(m = 306\)が見つかります。\[\frac{3^{41}}{2^{65}} \approx 0.9886025477296125\]\[\frac{3^{53}}{2^{84}} \approx 1.002090314041086\]\[\frac{3^{306}}{2^{485}} \approx 0.9989782831765219\]

特に53音平均律は過去に試みられています。

さらに\(m\)を大きくしていくと\(m = 665\)が見つかります。\[\frac{3^{665}}{2^{1054}} \approx 1.000043655063443\]

であるため、相当\(\varepsilon\)が小さくなります。

1オクターブ中に665音もあるというのは非現実的ですが、仮に665音平均律を採用すると

という著しい性質があります。

なお、665はPythagorean tripleにも出てきます。すなわち、\[399^2 + 532^2 = 665^2\]が成り立ちます。

さらに\(\varepsilon\)が小さくなる\(m\)を探索したい場合には、OEISの数列A005664A060528が利用できます。


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