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実対称行列のべき乗を求めるには (2019-05-09)

線形代数のテキストで紹介されているスペクトル定理を使うと、次のような計算問題が簡単に解けます: 2x2行列\(\begin{pmatrix} 0 & \sqrt{2} \\ \sqrt{2} & 1\end{pmatrix}\)の28乗を求めよ。

問題で与えられた行列を\(A\)とし、まず以下のように\(A\)の固有値と固有ベクトルを求めます: \[A v_1 = 2 v_1; A v_2 = (-1) v_2\]ここで\(v_1 = \begin{pmatrix} 1 \\ \sqrt{2} \end{pmatrix}\)、\(v_2 = \begin{pmatrix} 2 \\ -\sqrt{2} \end{pmatrix}\)であり、2つの固有値(\(2\)と\(-1\))は相異なります。上のベクトル\(v_1\)および\(v_2\)を正規化すると、それぞれ\[e_1 = \begin{pmatrix} \frac{\sqrt{3}}{3} \\ \frac{\sqrt{6}}{3} \end{pmatrix};e_2 = \begin{pmatrix} \frac{\sqrt{6}}{3} \\ -\frac{\sqrt{3}}{3} \end{pmatrix}\]になります。この\(e_1\)および\(e_2\)を行ベクトルにもつ2x2行列\[C = \begin{pmatrix} \frac{\sqrt{3}}{3} & \frac{\sqrt{6}}{3} \\ \frac{\sqrt{6}}{3} & -\frac{\sqrt{3}}{3}\end{pmatrix}\]は直交行列になります。つまり\(C\)の転置行列は\(C\)の逆行列になっています: \(C^{\top} = C^{-1}\)。(さらに、\(C\)自身が対称行列になっています。)

ここで\(A\)の固有値を対角成分にもつ対角行列を\(B\)とすると\[B = \begin{pmatrix} 2 & 0 \\ 0 & -1 \end{pmatrix}\]であり、\[A = C^{\top} B C\]が成り立ちます。スペクトル定理はこのように\(A\)が対角化できることを保証します。

あとは、\(A^{28} = C^\top B^{28} C\)であることから\begin{align}A^{28} &= C^{\top} \begin{pmatrix} 2^{28} & 0 \\ 0 & 1 \end{pmatrix} C \\ &= \begin{pmatrix} \frac{2^{28} \sqrt{3}}{3} & \frac{\sqrt{6}}{3} \\ \frac{2^{28} \sqrt{6}}{3} & -\frac{\sqrt{3}}{3} \end{pmatrix} C \\ &= \begin{pmatrix} \frac{2^{28} + 2}{3} & \frac{(2^{28}-1) \sqrt{2}}{3} \\ \frac{(2^{28}-1) \sqrt{2}}{3} & \frac{2^{29}+1}{3} \end{pmatrix} \\ &= \begin{pmatrix} 89478486 & 89478485 \sqrt{2} \\ 89478485 \sqrt{2} & 178956971 \end{pmatrix}\end{align}という答えが求まります。

ちなみに上の問題は、Lectures on Linear Algebraの100ページにExerciseとして載っています。


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