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「同様に確からしい」は何を意味するか (2019-04-30)

確率に関する説明で「同様に確からしい」という表現が用いられることがある。これは英語では"equally likely"や"equally possible"といった表現に対応する。

用例によると

1つの試行において,根元事象のどれが起こることも同じ程度に期待できるとき,これらの事象は同様に確からしいという。

上の定義は少し曖昧であるが、「当該の試行においては任意の根元事象に同じ確率が割り当てられる」という仮定と考えられる。

つまりKolmogorovによる確率の定義に従って確率空間を\((\Omega, \mathcal{F}, P)\)とするとき、上の仮定は

が成り立つということである。この仮定の下で、標本空間\(\Omega\)が有限集合なら、\(\mathcal{F}\)は\(\Omega\)の部分集合全体となる。その上、任意の事象\(A (\subset \Omega)\)について\[P(A) = \frac{\lvert A \rvert}{\lvert \Omega \rvert}\](ここで\(\lvert X \rvert\)は\(X\)に含まれる要素の個数)となるため、確率\(P(A)\)は事象\(A\)に含まれる要素の個数と全事象\(\Omega\)に含まれる要素の個数の比で決まる。つまりこの場合、ある事象の確率は、その事象に含まれる根元事象を数え上げることで求まることを意味する。

しかし、\(\Omega\)が無限である場合、上の仮定から任意の\(x \in \Omega\)について\[P(\{x\}) = 0\]であることがいえる。したがって\(\sigma\)-加法性から、\(\Omega\)は非可算である。


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