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金のエンゼルと銀のエンゼルの価値評価問題

森永製菓のチョコボールはくじ付きお菓子の定番である。くちばしと呼ばれるチョコボール取り出し口に金のエンゼルのマークがついていれば、これを貼付した応募ハガキを森永製菓に送ると「おもちゃのカンヅメ」という景品がもらえる。また、くちばしに銀のエンゼルがついていることもあり、こちらは5枚を1口として送付することで同じ景品が入手できる。

公式サイトのQ&Aによると、金のエンゼルや銀のエンゼルが当たる確率は秘密とされている。一方で、毎月1万缶のおもちゃのカンヅメが引き換えられているということは認めている。

さて、もしあなたがチョコボールを1箱購入するとして、そのくじ1枚としての価値はどのくらいであろうか?

ここでは仮に、景品1缶の価値を一定の金額で表せるものとし、それを\(V\)円とする。くじの総数(すなわち、市場に流通しているチョコボールの総数)を\(N\)、そのうち金のエンゼルのマークがあるものの数を\(N_G\)、銀のエンゼルのマークがあるものの数を\(N_S\)とする。そのときくじ全体と引き換えられる景品は全部で\(V (N_G + \lfloor \frac{N_S}{5} \rfloor)\)円相当である。したがって、公平なくじ1枚の価値を\(L\)円とすると、\[L = \frac{V}{N} (N_G + \lfloor \frac{N_S}{5} \rfloor)\]と表せる。

販売元の立場から見ると、チョコボール1箱につき、お菓子としてコストにこのくじとしてのコスト\(L\)を上乗せすれば問題ないことが分かる。しかし実は、このような価格設定をしても販売元は損しないどころか、以下に示すようにかなり得する可能性がある。これが金のエンゼルと銀のエンゼルという2種類の当たりがあることの興味深い点である。

市場に\(C(> 0)\)人の消費者が存在すると仮定する。上で述べた\(N\)枚のくじ全部が売り切れた際、ある消費者が得る銀のエンゼルの枚数を確率変数\(X_S(\geq 0)\)とする。\(X_S\)の期待値(平均)は\[\mathbb{E}[X_S] = \frac{N_S}{C}\]となることはすぐ分かる。マルコフの不等式から\[P(X_S \geq 5) \leq \frac{\mathbb{E}[X_S]}{5} = \frac{N_S}{5C}\]なので\[P(X_S < 5) = 1 - P(X_S \geq 5) \geq 1 - \frac{N_S}{5C}\]が成り立つ。

つまり、例えば市場に銀のエンゼルの総数に匹敵するほど消費者がいる(つまり、\(N_S = C\))場合には、銀のエンゼルが5枚に満たないために(金のエンゼルが当たらない限り)景品を1つも得られない消費者の割合が80%以上を占めることになる。彼らの得た銀のエンゼルは景品に引き換えられないので、その分の販売元のコストが丸々浮くわけである。これは、消費者同士の競争で生じた1口の枚数に満たない端数の当たりくじの価値を販売元が無視できる、という現象の一端である。

ただし昨今ではオークションサイトなどで銀のエンゼルが消費者間で取引されているため、各消費者が端数の当たりくじのコストをとり戻す機会が増えており、逆に販売元は流通させているくじ全体の価値により近いコストを負担しつつあると言える。


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